🐢主要コードを「4つのコード機能」に分類
ジャズスタンダード曲などで多用される主要なコード類を「4つのコード機能」に分類しました。ダイアトニック以外のコードも多く含まれますが、それらを「一時的な転調」としてだけ捉えて、意識としては常に “1つのKeyの中にいる” と考えます。
①トニック
表裏一体の主役達:ⅠM7、Ⅵm7ⅠM7の別の姿:Ⅲm7
使用スケール:Ⅰイオニアン = Ⅵエオリアン
②サブドミナントへのドミナント
表裏一体の主役達:Ⅵ7(b9)、Ⅰ7主役達の裏コード:bⅢ7、bⅤ7(b9)
ディミニッシュ:bⅡdim7、Ⅲdim7、Ⅴdim7、bⅦdim7
使用スケール:ⅥオルタードP5th =Ⅰミクソリディアンb9th
③サブドミナント
表裏一体の主役達:Ⅱm7、Ⅶm7(b5)Ⅱm7の別の姿:ⅣM7
ブルース風味:Ⅱ7、Ⅳ7
使用スケール:Ⅱドリアン = Ⅶロクリアン (=Ⅰイオニアン = Ⅵエオリアン)
④トニックへのドミナント
表裏一体の主役達:Ⅴ7、Ⅲ7(b9)主役達の裏コード:bⅡ7(b9)、bⅦ7
ディミニッシュ:Ⅱdim7、Ⅳdim7、bⅥdim7、Ⅶdim7
サブドミナントマイナー:Ⅳm7、(bⅦ7)、etc.
使用スケール:Ⅴミクソリディアンb9th = ⅢオルタードP5th
(=Ⅰイオニアンb13th =Ⅱドリアンb5th = Ⅶロクリアンbb7th)
ドミナントの「(b9)表記」について
Key=Cでいうと、Am7やDm7などの「マイナー系コード」に向かってドミナントモーションをするコードであるE7(b9)やA7(b9)などに “(b9)表記” が付いています。それに対して、CM7やFM7などの「メジャー系コード」に向かうドミナントであるG7やC7には “(b9)表記” が付きません。これは “♭9th ” というテンションノート自体に特別な意味があるわけではなくて、表記をすることで便宜上における “マイナー系コードに向かうドミナントコード” であることを示しています。別の表記法としては「~7(b9)」の代わりに「~7alt」を使用するパターンもあります。
つまり(b9)が付けば「フリジアン/オルタード系」のドミナントコードであり、(b9)が付かなければ「ミクソリディアン系」のドミナントコードであるわけです。
ドミナントの「裏コード」とは
「~へのドミナント」には、主役コードの “減5度(b5th)” の位置をルートとする「裏コード」が、それぞれに存在します。例えばG7の裏ならDb7(b9)、E7(b9)の裏ならBb7です。(Key=C)この “表と裏” の位置関係には明確な理由があり、G7の役割はCM7へのドミナントモーションですが、そのターゲット先であるCM7の半音上からドミナントモーションをするのがDb7(b9)。つまり「トニックへのドミナント」ならば、丁度トニックの半音上の位置に「裏コード」が存在します。
そしてお気づきの通り、裏コードでは “ (b9)表記 ” がメジャーとマイナーで「逆転」しています。メジャー系のCM7に対してはDb7(b9)となり、マイナー系のAm7に対してはBb7になります。
しかし上記2点の法則を難しく考える必要はなくて、表のG7/E7(b9)、裏のDb7(b9)/Bb7、これらの全てがKey=Cにおける「トニックへのドミナント」です。つまりソロを弾く側からすれば、4つの7thコードを全て “同一” と見なして扱えば良いのです。
ディミニッシュ7thコードについて
「~へのドミナント」には、主役コードと裏コード “合計4つ” の7thコードの “短2度(b9th)” の位置をルートとする「dim7コード」がそれぞれに存在します。短2度とは半音上のことであり、例えば「G7/E7(b9)/Db7(b9)/Bb7」の4つに対しては「Abdim7/Fdim7/Ddim7/Bdim7」に当たります。また、この4つのdim7コードは “ルート音が異なる” だけで、コードの構成音は「全て同音」です。
ソロを弾く側からすれば、“上記4つ” いずれのdim7に対しても「トニックへのドミナント」を弾くだけの話であり、もはやdim7であることすら意識する必要はありません。G7やE7(b9)を想定したうえで、これらを全て “同一” と見なして扱えば良いのです。
もちろん「サブドミナントへのドミナント」におけるdim7の場合でも、同じ構図が成り立ちます。
サブドミナントの「Ⅳ7」について
前編にて、サブドミナントのⅡm7に「ブルース風味」を加えたものがⅡ7だとお伝えしましたが、同じくサブドミナントのⅣM7に対しても「ブルース風味」を加えたものがⅣ7になります。ソロを弾く側からすれば、どの道「サブドミナント」の扱いなので、いつも通りに「Ⅱドリアン」を弾けば良いわけですが、それは結果としてⅣ7上で「Ⅳリディアン」を弾くことになります。
Ⅱ7では “長3度音” がアクセサリーとして無視されて、換わりに “短3度音” が弾かれていましたが、Ⅳ7では “短7度音” がアクセサリーとして無視されて、換わりに “長7度音” が弾かれるわけです。
いずれにせよ「サブドミナント」を弾くだけの話なので、難しく考える必要はありません。
🐢「酒とバラの日々」を4つのコード機能で分類
こちらのコード進行は「酒とバラの日々」の16小節で、Key=F(=Dm)です。
このコード進行を簡潔に「4つのコード機能」で分類していきます。
1-4小節目
1小節目のFM7はⅠM7で「トニック」です。
2小節目のEb7は “ サブドミナントマイナー ” のbⅦ7で「トニックへのドミナント」です。因みに、もし3小節がAm7ではなくDm7であった場合には、Eb7を “ A7(b9)の裏コード ” とも想定できますが、その場合でも結局は「トニックへのドミナント」なので、結果的には同じ扱いになります。
3-4小節目のAm7-D7(b9)は一見すると “Ⅱ-Ⅴの形 ” に思えますが、Ⅲm7とⅥ7(b9)としてⅠ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴの “Ⅰ-Ⅵ ” と同じ意味なので、「トニック」と「サブドミナントへのドミナント」です。
5-8小節目
5-6小節目のGm7はⅡm7で「サブドミナント」です。
7-8小節目のBbm7-Eb7は “Ⅱ-Ⅴの形 ” ですが、Ⅳm7もbⅦ7も “ サブドミナントマイナー ” なので、2小節間の全体を通して「トニックへのドミナント」になります。
9-12小節目
9-10小節目のAm7-D7(b9)は、3-4小節目にも登場したⅢm7-Ⅵ7(b9)なので、 “Ⅰ-Ⅵ ” と同じ意味の「トニック」と「サブドミナントへのドミナント」です。
11小節目のGm7はⅡm7で「サブドミナント」です。
12小節目のEm7(b5)-A7(b9)は “ マイナーⅡ-Ⅴ ” であるⅦm7(b5)-Ⅲ7(b9)なので「サブドミナント」と「トニックへのドミナント」ですが、1小節内で2つのコード機能を弾き分けるのは大変なので、12小節目の全体を通して「トニックへのドミナント」とします。
13-16小節目
13-14小節目のDm7-G7は一見すると “Ⅱ-Ⅴの形 ” に思えますが、実はⅥm7-Ⅱ7なので「トニック」と “ ブルース風味 ” の「サブドミナント」です。
15-16小節目のGm7-C7はⅡm7-Ⅴ7なので「サブドミナント」「トニックへのドミナント」です。
4つのコード機能で弾き分けた「酒とバラの日々」を試聴
今回もあえてクロマチックなどは使用せず、スケール構成音のみで構築されています。
🐢「コンファメーション」を4つのコード機能で分類
こちらのコード進行は「コンファメーション」の8小節で、またもKey=F(=Dm)です。
このコード進行も簡潔に「4つのコード機能」で分類していきます。
1-4小節目
1小節目のFはⅠMで「トニック」です。
2小節目のEm7(b5)-A7(b9)は “ マイナーⅡ-Ⅴ ” のⅦm7(b5)-Ⅲ7(b9)なので「サブドミナント」と「トニックへのドミナント」ですが、今回も全体を「トニックへのドミナント」として扱います。
3小節目のDm7-G7は一見 “Ⅱ-Ⅴの形 ” ですが、Ⅵm7-Ⅱ7なので「トニック」と “ ブルース風味 ” の「サブドミナント」です。しかし以下の2点を考慮して、全体を「トニック」として扱いました。
・前の2小節目から「トニックへのドミナント」でバトンを渡されている
・この3小節目に「~へのドミナント」が存在せず、次の4小節目へのバトン渡しが不要
続いて4小節目のCm7-F7は、またもや “Ⅱ-Ⅴの形 ” ですが「酒とバラの日々」には登場しなかった新しいパターンです。まずF7に関してはⅠ7なので「サブドミナントへのドミナント」です。
さてVm7のCm7ですが、これがもしF7とペアではなく “ 単体 ” で登場した場合には「露骨な転調」ともいえます。その際にはKey=Eb(=Cm)としてCエオリアン、またはkey=Bb(=Gm)としてCドリアンを弾くなどとした「ゲスト出演者」が対処します。
しかし今回は “ F7とペア ” として、見た目が “Ⅱ-Ⅴの形 ” で登場しています。これは元々F7単体であった小節が、後から無理やり “Ⅱ-Ⅴの形に分割 ” されて、Cm7-F7に変化したと考えます。
ゆえに、この4小節目の本質はⅠ7であるF7なので、小節全体を「サブドミナントへのドミナント」として扱います。
ゆえに、この4小節目の本質はⅠ7であるF7なので、小節全体を「サブドミナントへのドミナント」として扱います。
5-8小節目
5小節目のBb7はⅣ7なので “ ブルース風味 ” の「サブドミナント」です。前項にて、直前の4小節目が「サブドミナントへの」ドミナントであったことも、それを裏付けます。
6小節目のAm7(b5)-D7(b9)はⅢm7(b5)-Ⅵ7(b9)ですが、こちらも「酒とバラの日々」には登場しなかった新しいパターンで、見た目はマイナーⅡ-Ⅴである “ Ⅶ-Ⅲの形 ” です。
実はこれも4小節目のCm7-F7と同じ境遇にあり、元々D7(b9)単体であった小節が、後から無理やり “ Ⅶ-Ⅲの形に分割 ” されてAm7(b5)-D7(b9)に変化したと考えます。ゆえに、この6小節目の本質もⅥ7(b9)であるD7(b9)なので、小節全体を「サブドミナントへのドミナント」として扱います。
実はこれも4小節目のCm7-F7と同じ境遇にあり、元々D7(b9)単体であった小節が、後から無理やり “ Ⅶ-Ⅲの形に分割 ” されてAm7(b5)-D7(b9)に変化したと考えます。ゆえに、この6小節目の本質もⅥ7(b9)であるD7(b9)なので、小節全体を「サブドミナントへのドミナント」として扱います。
因みに、このコンファメーションの6小節目は、コード進行がAm7(b5)-D7(b9)ではなくAm7-D7(b9)になるパターンもあります。このAm7(b5)とAm7は一見とても似ていますが、コード機能としては大きく異なり、Ⅲm7であるAm7は、事実上のⅠM7として「トニック」になります。
とはいえ、D7(b9)が「サブドミナントへのドミナント」であることは変わらず、直前の5小節目も「トニックへのドミナント」ではないので、6小節目全体を「トニック」として扱う価値は薄く、結局はAm7-D7(b9)の場合でも、小節全体を「サブドミナントへのドミナント」として扱います。
続いて、7小節目のG7はⅡ7なので “ ブルース風味 ” の「サブドミナント」です。
8小節目のGm7-C7はⅡm7-Ⅴ7なので「サブドミナント」と「トニックへのドミナント」ですが、小節全体を「トニックへのドミナント」として扱い、1小節目のⅠMであるFにバトンを渡します。
4つのコード機能で弾き分けた「コンファメーション」を試聴
こちらもクロマチックなどは使用せずに、スケール構成音のみで構築されています。
🐢「露骨な転調」と「微妙な転調」
こちらのコード進行は「コンファメーション」の後半部分にある8小節です。いったん1-4小節目を後回しにして、先に5-8小節目から見ていきます。
5-7小節目の「露骨な転調」
5-7小節目のEbm7-Ab7-DbM7は、基本Key=F(=Dm)として見るとbⅦm7-bⅢ7-bⅥM7になりますが、そんなことを考えるだけ無駄なくらいの「露骨な転調」です。見た目の通り “Ⅱ-Ⅴ-Ⅰの形 ” として素直にそれを受け止めて、Key=Db(=Bbm)におけるⅡm7-Ⅴ7-ⅠM7とします。
その際のコード機能は、Key=Db(=Bbm)における「サブドミナント」「トニックへのドミナント」「トニック」になりますが、基本Key=F(=Dm)のなかに「露骨な転調」として現れたこれら “他Keyのコード進行部分” は、各コード機能で弾き分けせずとも、そのKeyにおける “スケール一発弾き” をするだけで、転調ならではの充分なインパクトを与えます。
つまりEbm7-Ab7-DbM7の3小節間を通して、トニックスケール「Dbイオニアン(=Bbエオリアン)」だけを弾き続けても、アドリブソロにそれなりの説得力が生まれるわけです。
最後の8小節目のGm7-C7は、基本Key=F(=Dm)のⅡm7-Ⅴ7なので「サブドミナント」と「トニックへのドミナント」ですが、今回も小節全体を「トニックへのドミナント」として扱います。
1-2小節目のCm7-F7は中盤でお伝えした通り、Key=F(=Dm)におけるⅠ7のF7を無理やり分割して “Ⅱ-Ⅴの形 ” であるCm7-F7に変化させたものです。そして3-4小節目のBbM7はその解決先であるⅣM7です。(先程はブルース風味のⅣ7でした)
つまり基本Key=F(=Dm)のままとして、1-2小節目を「サブドミナントへのドミナント」、3-4小節目を「サブドミナント」として扱う形が先程の解釈であり、勿論その方法でも全く問題ありません。
しかしこの4小節間は一瞬の出来事ではないので、1-2小節目を「サブドミナントへのドミナント」として扱うと、Cm7を無視する時間が長過ぎると感じる場合もあります。その際は逆にシンプルに “ 転調先のⅡ-Ⅴ-Ⅰ” として考えてしまうのも1つの手段です。要は先程の5-7小節目と同扱いです。
その場合の転調先はKey=Bb(=Gm)で、スケール一発なら「Bbイオニアン(=Gエオリアン)」です。
転調を弾き分けた「コンファメーション後半」を試聴
こちらもクロマチックなどは使用せずに、スケール構成音のみで構築されています。
🐢コード機能どうしの「つながり」
こちらは前回のKey=C(=Am)に移調した「ドナ・リー」を、コード機能別に分類したものです。
コード進行が目まぐるしく切り替わる一方で、コード機能は①②③④の順番を保っています。
続いて今回の「酒とバラの日々」です。
今度は①④/①③と順番を飛ばす進行がありますが、②③/③④/④①の順番は保っています。
次に「コンファメーション」です。
見えてくる「つながりのパターン」
コード進行に “ 決まり ” はありませんが、以下の「つながりのパターン」がとても多いです。
トニック:その先は何につながるか予測できない
トニック:その先は何につながるか予測できない
サブドミナントへのドミナント:その先は「サブドミナント」につながる
サブドミナント:その先は「トニックへのドミナント」につながることが多いが油断できない
トニックへのドミナント:その先は「トニック」につながる
特に「~へのドミナント」に限っては、基本としてドミナントモーションの解決へと向かうことが予測できるので、アドリブでの演奏の最中における “ 心の準備 ” が可能となります。
🐢マイナスワン(カラオケ)
酒とバラの日々
コンファメーション
コンファメーション転調部分
🐢最後に
前編に引き続き、今回は「Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴのコード機能だけでソロを弾く方法」の補足的内容をご紹介しました。そもそもこの手法におけるコンセプトは、登場してくる様々なコード進行を出来るだけ “ 転調とは解釈しない ” で突き進むものでした。それとは逆に、登場してくる様々なコード進行を “ 深読みして転調と解釈する ” のも、またジャズらしい姿といえます。何れにせよ正解はないので、伴奏にさえ合えば “ それで良し ” であります。
ジャズは「自由な音楽」なので、こんなのもアリ(🐜)じゃないですかね(❗❓)
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